事実をひたすら記述する。
ガリレオの時代には、何が物体を落下させるのかというので、やれ媒体だ、押す力と引く力だと、まったく千差万別な議論が戦わされたものです。
ガリレオはその論争をすべて無視して、ただ物体が落下するかどうか、そしてその落下速度を、ひたすら記述することにしたのです。もちろん誰もがその記述には同意できました。
ですから現代の僕らも、現象の裏にあるしくみとか理論とかに関する議論はできるだけ無視して、みんなが同意できる方針にそって研究をつづけることです。こうして経験を積むうち、次第にその背後にひそむ納得のいくような理論が、明らかになってくるかもしれません。
『科学は不確かだ!』 R.P.ファインマン(著)・大貫昌子(訳)